経過

医師 森浦滋明

体重は術後半年で最低となり8㎏近く減りました.皮下脂肪も減ってお尻に褥瘡もどきができました.体重は 4kg近く戻りましたが,全麻の内視鏡手術後に再度低下しました.またアデノウィルスやインフルエンザなどでも体重が減少します.

体重のグラフ

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4月に手術を受けて6月からほぼ毎日タニタのスマホ・ソフトで体重を記録しています.術後6カ月はどんどん体重が下がり,術後6カ月の10月が最低でした.術前59kgが51kg近くまで.主治医からは特に筋肉が減りますよと言われましたが,自分の感触では特に下腿や大腿,臀部の痩せを強く感じました.6カ月を過ぎるとおなかの調子は良くないもののだんだん体重が増えていきました.タニタは独自の「均質点数」を表示してくれ,術後「低い」の評価が半年を超えたころから「普通」になったのは少し安堵感がありました.しかし運動すると息切れが辛くなかなか体力はつきません.

お尻の褥瘡もどき

術後瘠せて体脂肪はどんどん減り,最低はタニタの体重計で7%.スキーで打撲したためもともと尾骨が突出気味なのに加えて皮下脂肪の減少で術後直ぐに尾骨部の皮膚が痛くなってきました.少しこすれても結構な痛みで赤く薄い剥皮状態.周囲はガサガサに乾燥.2年経過して痛いながらも皮は貼ってきた感じで,体脂肪も10%に近づきCTでも臀部に薄っすら皮下脂肪がついてきました.

左のCTは上が術後1年,下が術後2年.皮下脂肪が青色,内臓脂肪が赤色に着色されています.下が背側,画面左が本人の右.矢印で示すようにお尻の皮下脂肪が少し増えています.

近所の薬局のお勧めで,ずっとlocobase cream を使用しています.比較検討はしていませんが,かつて褥瘡治療に携わっていた感触からは良さそうな外用薬です.同”Milk”は柔らかすぎて同様の創には勧められませんが,重症の手荒れには良いかもしれません.

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下咽頭がん手術で体重減少

術後1年くらいでごく表在の下部咽頭がんが見つかりました.内視鏡で観察しにくい梨状窩のがんで同僚の内視鏡医から自分なら見落としたかもしれないと言われました.特別な喉頭鏡を使用した内視鏡切除(ELPS)で,全身麻酔ですが1泊入院で済み体への負担は大きくないと思っていました.しかしその後になんとなく体調不良を来し再度体重が減り始め,53.5㎏を超えるところまで回復したのが52㎏を切ってしまいました.1カ月くらいで体重低下は止まり,また上昇してきました.食べられる量より,お腹がスッキリしている時に体重が増えているような気もします.術後2年目の多発の食道がん内視鏡治療後に体重の変化はなく,体重は55kg前後まで戻りました.

体重増加のために

術後2年以上経過しても,体重の上下に一喜一憂は変わりません.一日に inゼリー,アミノ酸,MCTオイルで600kCalくらい摂取しているので,これが無くなることを想像すると,どこまで体重が低下するかと思い,恐ろしく感じます.逆にもう少し増やせれば体重は増えるかもしれません.しかし2年経過以後も脂肪便のなので,もう少し消化機能が回復するのが一番大切なのでしょう.主治医の話では,たくさん食べられるようになるのは無理だが,5年くらいは胃腸を含め体調の改善は期待できるとのことです.気長にがんばりましょう.

孫のカゼとインフルエンザ,ついに コロナ

術後1年半くらいで次男夫婦,孫1人と同居になり,その後孫がもう一人増えました.ちょっとお守や保育園のお迎えなどお仕事をいただきます.保育園はカゼ・ウィルスがいっぱいで,孫たちは頻繁にカゼをもらってきます.5年に一度くらいしかカゼを引かないくらいご縁が無かったのですが,2年半を過ぎ,ひどいカゼ,アデノウィルス感染を経験しました.主に子供の病気で,目ヤニなど眼の症状が特徴で,感染力が強くプール熱とも呼ばれます.また,アルコールが効きにくい曲者です.筆者もすごい目やにで目が見えなくなる程の症状が2日くらい続きました.発熱は無かったのですが,症状がひどい日には倦怠感が強く,ウィルス血症を来していたかもしれません.当然体重も減り500g以上低下しました.少し良くなったかと思っていたら,今度はインフルエンザです.体温はあっという間に38.7℃まで上がり悪寒と強い倦怠感が襲ってきました.ワクチンのおかげか一晩で元気になったのですが,体重が1㎏減ってしまいました.

体重も少し回復傾向で55kg台前半,ウィルスの攻撃ももうおしまいであって欲しいと思っていた矢先,妻が突然39℃近い発熱.ごく軽い上気道症状のみなのでインフルエンザかと思ったらコロナ.幸い高熱は1日で下がり,味覚嗅覚障害や異常な倦怠感,brain fogなどなさそうです.ただし普段からしばしばfoggyなので名医でも診断しかねます.2階の住人息子夫婦と孫2人は感染すると仕事に穴があくので大変と接触を断ちました.食堂は1階の一カ所のみなので交互使用です.著者は感染するときには何をやっていても罹るのでというのと,あまりに別々もお気の毒と思い食事やお茶は一緒にしていました.マスクの予防効果はほぼないことが分かっているのでマスク着用なしでした(感染している本人は着用必須).もともと1階の食堂や居間をはさんで東西に別室で寝ているので,接触時間はごくわずかですが,ついに自分もコロナに罹ってしまいました.

そういえば味噌汁で気づきました.塩分に過敏な感じでいつもより塩辛く感じます.小数点2桁まで測定できる塩分濃度計を使用しているのでまずまず一定の塩分のハズですが,いつもより塩辛いのです.麺類のだし汁も濃く感じます.コロナの嗅覚障害の頻度は20・30代ではおよそ7割とのデータもあり,味覚障害の頻度も同様に高いが,嗅覚障害に影響されているとするものもあります.しかし味覚や嗅覚が鈍くなり,ひどいと何を食しているかわからなくなったり,甘いものを甘く感じない,口の中に何もないのに苦みや塩味などを感じるなど,かなりタチの悪い症状は味覚そのものも障害されていることを示唆します.日頃息子たちに比べると味の感度が落ちていると思うことがしばしばありました.敏感になっているのは少し若返った感じで悪くありません.

孫の保育園でもカゼはおさまり,インフルもいなくなったとのことで,もうウィルスは卒業したいものです.長年職場のスタッフからカゼひかないネとの評価をもらっていましたし,妻もカゼを引くことは極めて稀で著者以上に丈夫,それが秋から2人とも複数回ひどいウィルス感染症にかかり,少し戻った体力も大分逆戻り.体重は今回のコロナでなんと54kgを切ってしまいました.そこそこ無理をして食べたくないゼリーやオイルを頑張ってきましたが,また頑張るしかありません.

心房細動はコロナが原因?

コロナに感染して3週間くらいしてから心臓がゴトゴトするようになりました.不整脈です.一日中症状があるわけではなく夕食後くつろいでいる時にひどく感じます.これまでも時々心臓がゴトゴトして脈の結滞(脈が抜けて飛んだ様になる)があったし,3段脈(2回の正常な脈に1回の期外収縮が混じる規則的な不整脈)を感じたことは何度もあります.しかし今回のは全く不規則なリズムと脈の強弱で,心房細動と思われます. 心臓の働きとして,心房から心室に規則正しく電気刺激が流れることで,心房と心室とが交互に収縮と拡張を繰り返し,全身の血液をスムースに循環させます.心房細動は心房で異常な電気が発生し心房が痙攣したような状態になります.心室への電気は気まぐれにしか流れず,心房の動きと心室の動きが規則正しく連動しなくなります.そのためリズムも脈の強弱も不規則になり,心機能は低下します.また,血液がスムースに流れないため血栓ができやすくなり脳梗塞の原因になります.

コロナは心筋炎を来すことがあるので心房細動を含めて調べてみると,コロナで入院した患者さん(重症のコロナ)の15%近くが心房細動を来すとの調査がありました.不整脈が数日続き職場で心電図検査を受けましたが,その時は規則正しいリズムでした.技師さんに症状を話すとApple Watchを購入しなさいとのアドバイス.かなりの精度で心電図が記録できるとiPhoneで見せてくれました.診断治療な可能なレベルでびっくりです.その夜早速ネットで購入,2日後に送られてきます.その夜も次の日も不整脈が出現しましたが,Watchが届いた夜からピタリと出現しなくなり,性状の心拍にもどってしまいました.良い方に拍子抜けしましたが幸運でした.

術後3年経過 腫瘍マーカーシフラが高値

定期検査で造影CT,上部内視鏡,採血検査を受けました.腫瘍マーカーのシフラが高値である以外再発の兆候はなさそうです.はこれまでずっと正常範囲(2.2ng/ml以下)だったのですが5台といきなり高値になりました.定期の検査で分かりにくいのは骨転移ですが,骨転移ならALPなど血液データに少しは異常が出そうです.腫瘍マーカーは時に原因不明の高値を呈することがあり,主治医ともどもあまり深刻にとらえていませんが経過観察が必要です.

癌の治療後はがんの種類に応じて腫瘍マーカーを定期的に検査します.正常値であれば患者さんに安心していただけますし,異常値が出て再発が早くわかり早く治療を開始できることもあります.

少し話題が外れますが,健診レベルではマーカー検査は前立腺がんのPSA以外あまり勧められません. PSAは9割くらいの前立腺がんで上昇が認められ,早期発見に有用とされており健診でも勧めています(日本では推奨されていますが,欧米では議論があります).しかしほかの腫瘍マーカーで早期発見ができることは稀で,原因不明の異常値で受診者を心配させることの方が多いのです.複数の腫瘍マーカーをセットにしてオプション検査にしていますが,受け付けの事務さんには,ご希望が無い限り腫瘍マーカーを勧めないようお願いしているほどです.

PS: 3か月後にシフラを再検査したところ,正常範囲に戻っていました.コロナを含む種々ウィルス感染の影響だったのでしょうか.検索しましたがマーカーとウィルス感染に関する文献は見当たりません.食道がんはタチが悪いため再発は早期におきることが多く,再発の8-9割は2年以内におきます. 主治医にシフラの結果をメールで報告しました. 3年経過し90%は治ったとみなせるので,少しお祝いしてもよいのでは,とのお返事をいただきました.

食道がん術後の標準的な体重推移

術後の体重の変化は普通どんなだろうかと,英語の論文も含めアレコレ調べています.しかし,参考になるようなデータ,すなわち調査対象の患者さんの数が多くて継時的に調べた研究,はないようです.主治医にも聞いてみましたが,術後の体重推移のような地味な研究はないですね.体重の変化は個人差が大きいですが,概ね3-6カ月で最低になり,その後の変化も人それぞれです.とのお答えでした.

友人の専門家にも質問しました.かつての勤務先の 国立がんセンターでも術後の体重変化のデータを収集していないとのことです.術後の体重は3か月で10%減少し,その後はなかなか増えない.体重を維持することに努めて、うんと頑張って食べるようにすれば,2年くらいかかって減った分の半分くらいが戻る,と患者さんには話している,とのことです.

また,食事の摂取に関しては,食道癌の術後は胃が残っているのに胃全摘後より食後の不快感の訴えが強い感じで,胃も切除して結腸で再建した患者のほうが食事のQOLが良いと思うくらい.胃が引き上げられて 縦隔で拡張したりダンピングしたりするのが、胃が無い状態より具合が悪いのかと感じていました.とのこと.さらに,幽門形成*~ダンピングに関して,幽門形成を止めてダンピングは減って、代わりに食後の圧迫感を訴える患者が増えた印象だが,痩せているのはダンピングとそれに続く下痢の患者のほうだ,と返答してくれました.

*:幽門形成 : 胃の出口が幽門で,胃の筋層が分厚くなったような構造で,胃と十二指腸のつなぎ目に当たります.幽門は,胃から十二指腸への食物の流れを胃と協調してにコントロールしています.消化し易い水分や糖質は早く通過させ,脂肪が多い食物はゆっくり通過させることになっています.再建のため胃管を造ると迷走神経が切断され,胃の動きが悪くなり食物がなかなか胃から出ていかなくなります.通過をよくするために胃の出口の幽門を広げるのが幽門形成術で,食道切除後の胃管での再建では必須の手技とされていました.

幽門形成術は縦(長軸方向)に切開して横(短軸方向)に縫合する方法が古典ですが,その後用手拡張,すなわち指で筋層を押し広げ破壊するような手技が行われるようになりました.しかし食物の通過が良すぎるとダンピングや下痢が起きやすくなるため,また迷走神経を切断してもそこそこ食物は通過してゆくので,幽門形成は行わない施設が多くなりました.また胃での食物の停滞を避けるため胃管のボリュームを小さくしているようです.

ちなみに”食道癌術後で体重が最も減るのはいつ頃ですか”をAI(Perplexity)を使って検索すると

術後3ヶ月間が体重減少のピーク
 • 術後最初の3ヶ月間が体重減少が最も著しい時期である。
 • この時期の適切な栄養管理が重要とされている。
術後6ヶ月間は体重減少が継続
 • 術後6ヶ月間は体重減少が継続する傾向にある。
 • 70歳以上の高齢者では術後100日以上の経腸栄養継続で体重減少がやや抑えられる可能性がある。
術後1年半までに体重が最低値になる
 • 術後0.5年から1.5年の間に体重が最低値を示す3。
 • この時期の全身状態の維持が、その後の治療選択肢を左右する可能性がある3。
したがって、食道がん術後では術後3ヶ月が体重減少のピークで、術後6ヶ月までは継続的な体重減少に留意が必要である。特に術後最初の3ヶ月間の適切な栄養管理が重要とされている.

文献 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspm/9/2/9_128/_pdf
https://nutritionmatters.jp/common/pdf/disease/EsophagusCancer.pdf


術後3年半経過

CTでは再発を認めませんでしたが,内視鏡では左下咽頭に粘膜のびらん(粘膜が薄く剥けた状態)を認めました.また内視鏡治療が必要かと思いましたが,1週後の耳鼻咽喉科外来の所見では,病変を同定しにくいほど良い方に変化しており,炎症の所見でよさそうとの判断.やれやれです.先述のように,食道,口腔,咽頭(食事の通過する喉),喉頭(呼吸の通過する喉)は扁平上皮という同様の粘膜で覆われ,酒,タバコなど危険因子が共通.食道がんに罹患すると多重顔になりやすい部位なので,今後も要注意で経過観察が必要です.

体調不良・体重減少

昨年秋の体調はまずまずで,55㎏少々の体重は1年後には56㎏を超えるかもと思っていました.しかし年明けから体調はすぐれず,腹痛やムカムカ感を感じることが多く,食事量は減少傾向です.体重は54㎏弱と1㎏以上減少してしまいました.

原因として疑われるのはまず老化です.年を取ると消化吸収機能が低下するのか,筋肉が衰えるのか,老化以外に理由なく痩せて安定してしまうことがよくあります.体重減少で受診されますが,特に病気が見つからない患者さんが大半です.

次にコロナの後遺症.もともと弱い胃腸がさらに不調なのは,年明けに感染したと思われるコロナの後遺症かもしれません.後遺症として頻度が高い倦怠感はやや当てはまっていると思いますが,割と頻繁におこるとされる味覚や嗅覚障害は全くありません.むしろ塩辛い味付けに敏感な感じです.またあれこれ調べても,胃腸障害はあまり話題になっていません.その他ウィルス感染ですが,昨年秋から孫と同居して,とにかくよく風邪をもらいます.胃腸への影響もあるようで不調の原因かもしれません.

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